機能性リン脂質

1. アクティブターゲッティング脂質

リポソーム研究の変遷

第一世代
第一世代 典型的なリン脂質およびコレステロールからなる古典的なリポソーム
第二世代
第二世代 リポソーム表面をPEGなどで修飾することにより血中滞留性を上げたリポソーム。EPR効果により固形がんへの集積性を高めることができる。
第三世代
第三世代 PEGおよび抗体やペプチドなど標的化分子でリポソーム表面を修飾し、血中滞留性を上げ、さらに標的部位への移行性を高めることができる。

PEG結合型リン脂質

MPEG-DSPE
(DOXIL®のような
血中滞留性リポソームに用いられる。)
MPEG-DSPE
ペプチド結合PEG脂質
(静岡県立大学・奥教授との共同研究。)
ペプチド結合PEG脂質

ペプチド-PEG修飾リポソームの体内動態

ペプチド-PEG修飾リポソームの体内動態

APRPG-PEG修飾リポソームは投与後24時間後にはPEGのみで修飾したリポソームよりも有意に腫瘍組織に集積していました。

ペプチド-PEG修飾リポソームの腫瘍組織内動態

赤:リポソーム 緑:血管内皮細胞

  • 未修飾リポソーム未修飾リポソーム
  • PEG修飾リポソームPEG修飾リポソーム
  • APRPG-PEG修飾リポソームAPRPG-PEG修飾リポソーム

PEGのみで修飾したリポソームはEPR効果により腫瘍新生血管の外に漏出し、血管辺縁に留まってることが観察されました。
一方、APRPG-PEG修飾リポソームは血管外への漏出に加えて、血管内皮細胞への接着や取り込みが観察されたため、ペプチド修飾の効果によりリポソームが標的化できていることが示されました。

ドキソルビシンを内封したペプチド-PEG修飾リポソームによる固形がん退縮効果

ドキソルビシンを内封したペプチド-PEG修飾リポソームによる固形がん退縮効果

ドキソルビシンを内封したAPRPG-PEG修飾リポソーム投与群では他の投与群と比較して有意に腫瘍を縮小することができました。

Maeda N. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 14, 1015 (2004)
Maeda N. et al., J. Control. Release, 100, 41 (2004)
Maeda N. et al., Biol. Phanm. Bull., 29(9), 1936 (2006)

2. Charge-Reversible Lipid

DOP-DEDA

DOP-DEDA

Lipid Nano Particle(LNP)の模式図

Lipid Nano Particle(LNP)の模式図
粒子径 siRNA封入率 表面電位
95 ± 5 ㎚ 96.4% 7.4 -24.6
5.6 +8.2
4.7 +30.0
Lipid Nano Particle(LNP)の模式図

LNPを用いた標的遺伝子のサイレンシング

Lipid Nano Particle(LNP)の模式図

LNPを用いた標的タンパク質のノックダウン

3. DHSM

DHSM(Dihydro sphingomyelin)

DHSM

日本精化は、GMP条件下でDHSM(ジヒドロスフィンゴミエリン)を安定的かつ商業的に生産する技術を開発しました。
DHSMは全合成品であることから天然物と違い側鎖の長さが一定であり、酸化や加水分解されにくいことから品質管理しやすいことなどのメリットがあります。
また、DHSMを用いたリポソームは、一般的なリン脂質を用いた場合より血中滞留性が高いという性質があります。

(文献:特許WO2018/181963、Biochimica et Biophysica Acta 1768(2007)1121)

実施例

本製品を使用した研究開発は、既に行われています。例えば富士フイルム株式会社のリポソーム製剤FF-10850に使用され、現在米国で第1相試験を実施中です。

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