日本精化株式会社は国立研究開発法人 産業技術総合研究所 ゼロエミッション国際共同研究センター 有機系太陽電池研究チーム 村上拓郎研究チーム長、小野澤伸子主任研究員との共同開発として実施した、ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上研究の成果が応用物理学会の“Applied Physics Express (APEX)”に論文として掲載されました。
ペロブスカイト太陽電池のホール輸送材料の製膜にはハロゲン系溶媒が使用されています。本論文のホール輸送材料は、非ハロゲン系溶媒で製膜可能であることから、製膜時の環境負荷低減が期待されます。また、本ホール輸送材料を用いることにより、ペロブスカイト太陽電池の耐久性が大幅に向上することが確認できました。
Applied Physics Express (APEX)へのリンク
https://doi.org/10.35848/1882-0786/acaa88
【用語の説明】
◆ペロブスカイト太陽電池
有機と無機の材料で作られるペロブスカイト結晶から成るペロブスカイト層が電子輸送層とホール輸送層に挟まれた構造を有している。ペロブスカイト結晶が光を吸収し、その光エネルギーで負電荷を持つ電子と正電荷を持つホールがペロブスカイト結晶層内で生成する。ここで生成した電子は電子輸送層を通して外部電極に取り出され、同様に生成したホールはホール輸送層を通して外部電極に取り出されることで電流と電圧が発生し、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
◆ホール輸送材料
発電層内で発生したホール(正の電荷)を抽出し、電極に輸送するための材料。この材料の層をホール輸送層と呼ぶ。ペロブスカイト太陽電池ではSpiro-OMeTAD (2,2′,7,7′-Tetrakis(N,N-di-p-methoxyphenylamino)-9,9′-spirobifluorene)やPTAA (Poly[bis(4-phenyl)(2,4,6-trimethylphenyl)amine])などのp型有機半導体が用いられることが多い。ペロブスカイト太陽電池においてはホール輸送層として有機物の材料(有機ホール輸送材料)を用いた方が無機材料よりも高性能が期待される。